【片手杖でエスカレーター】手すりの動きにリズムを合わせて乗る。降りる時は杖が先

こんにちは。
みんらぼのゆうさくです。

普段何気なく利用しているのに、いざ自分の身体の調子が悪くなってみると突然使いづらくなるものが、世の中にはたくさんあります。
その中でも、今回話題にするのは「エスカレーター」。
エレベーターじゃないですよ、エスカレーターです。
上下する箱ではなくて、動く階段的なアレです。

・・・え、いや、僕がどっちがエスカレーターでどっちがエレベーターか、ちゃんと覚えたのが割と最近だったから、ややこしい人もいるかなって・・・え、いない?あ、ハイ、ソウデスカ。

自分のペースと動作のペースが噛み合わないと、急にエスカレーターが怖くなる

私事で恐縮ですが、僕は18歳の時に自分の骨盤の骨を自分の右足のかかとに移植するという妙な手術をしたことがあります。
骨盤とかかとの骨を砕いているので、当たり前だけど歩けなくて。
二週間ほど車椅子での入院生活が終わってから、松葉杖をついて退院しました。

その後、母と近所のスーパーに買い物に行ったのですが、その時に生まれて初めてエスカレーターが怖いって感じたんですよね。
だって、こっちは初めての松葉杖生活で普通に歩くのもままならないのに、足元でウィンウィン動いてる足場は僕の身に何かあっても空気を読んで止まってなんかやんないんだかんね的ムードを放射し続けているのだもの。

結局その時は乗り口の辺りで少しモジモジしてから生きている左足でぽんと乗っかったけれど、結構ドキドキしました。
ご年配の方がエスカレーターの前でモジモジしてるのをよく見かけるけれど、その度に、あの時のことを思い出します。
便利なサービスやシステムも、自分のペースで使えないと、こわいものですよね。

毎日エスカレーターを使っている片手杖ユーザーが身内にいました

なんてことを思い出したのは、みんらぼ仲間のヒロさんと話していた時でした。
ヒロさんは毎日会社に電車で通勤しているのですが、脳性まひの障害を持っていて、移動の時には片手杖を使っています。

脳性まひという障害は症状(と言っていいのかしら)が実に多様で、あまにり個人差が激しいので、十把一絡げに語れるようなものではありません。
ですが、精神的に緊張すると身体の不自由度が高まるという大きな共通点があります。

そして、普段屋外を移動していて精神的な緊張を感じる機会が多いのは、以前脳性まひをもっている人と横断歩道を渡ることをテーマに書いた記事でもお話ししたように、自分のペースではなく他人や設備のペースに合わせて動かなければならない時です。
まさしく僕が松葉杖生活をしている時にエスカレーターの入口であわあわしていた時と同じ気分を、ヒロさんは毎日味わっているのだといういうことなのです。めっちゃ大変やん。

とはいえ長年同じライフスタイルをとっていると、いろいろなノウハウが生まれてくるもの。
脳性まひで身体が動かしづらく、片手杖ユーザーのヒロさんがエスカレーターを使う時にどんなことをしているのか、本人も自覚していなかったことを根掘り葉掘り聞いてきました(笑)

片手で手摺り、もう片手で杖を自分と同じ段に置く。降りる時の第一歩は“杖”からやで

ええと、まずですね、ヒロさんは大阪の人なんですね。
大阪ってエスカレーターの待機位置が右側なんです。
だから普段の生活圏が左側待機の人は、左右反転して読み進めてください(笑)

※このチエワザは下りのエスカレーターに乗るときのことを想定しています♪

まずエスカレーターに乗り込む時は、できるだけ早い段階で、右手で手摺りに触れるようにします。
この時、右手から伝わってくる感覚で、手摺りの動くスピードと身体を動かすスピードを合わせます。
足場のところに到達するまでに手摺りと身体の動くスピードを合わせて、止まらないようにすることがポイントです。

片手杖の人がエスカレーターに乗るときの様子のイラスト

足場にのっかったら、右手は手摺りを掴んだまま。
左手で杖を持って、自分と同じ段に置いておきます。
急いでる人が駆け下りてきたりするので、できるだけ待機列側に身体を寄せておくのが大事。
本当は隣を駆け下りられたら怖いんだけど。
本当はエスカレーターは歩いちゃいけないんだけど。

片手杖の人がエスカレーターに乗っている様子の画像

そして、ここが大事な降りる時の話し。
エスカレーターを降りる時って、乗る時とは逆に、動いている床から動いていない床に飛び降りるような動きになります。
精神的に緊張すると身体が固まって動かせなくなる方にとっては、この飛び降りる動きがとってもハードルが高いのだそう。

たとえば、降りた拍子に転んでしまったら後ろから続いている人たちを巻き込んでしまうかもしれません。
特に朝は人が多いし、エスカレーターに乗っている人々が次々に倒れこむようなことがあったらえらいことです。
そんな状況でなくても、単純に痛いこととか、人前で転ぶことでみじめな気持ちになってしまうことも辛い。
だから絶対転ばないようにしないといけないんだけど、そう思うとますます緊張が高まって…
そんな考えのループが、下りエスカレーターの中腹を超えたくらいから渦巻き始めるのだそうです。

そんな、既にある程度緊張している状態でエスカレーターを降りる時は、まず左手に持っている片手杖を、自分よりも先に着陸先の地面に付けます。
その杖で身体のバランスを取りながら、できるだけゆっくり地面に着陸するのです。
杖に身体を預けるとか、そういうこと以上に、地面に繋がった安定感のあるものに触れているという、その安心感が大切なんです。

片手杖の人がエスカレーターから降りようとしている様子のイラスト

要望!エスカレーター降り口に着陸用の手すりを付けてくださィィイ!

前項の最後の話しを読んで、「エレベーターの手すりを掴んでおけばいいんじゃないの?」と考えた方もいるかもしれません。
僕もそう思いましたもの。

ところが、ヒロさんにとって一般的なエスカレーター降り口の手すりは″短すぎる″のです。
「ここでも手すりがほしい」と感じる位置よりずっと手前で、くるんと下がって消えてしまうのですよ。

エスカレーターの手すりは、あくまでエスカレーターに乗っている間だけ掴んでおくもの。
ヒロさんが必要としているのは、エスカレーターから地面に着陸する時に自分の身体をしっかりと受け止めてくれるような、万が一バランスを崩しても、しがみついてさえいれば激しく転ぶことは防げるような、そんな手すりなのです。

もし駅や商業ビルの設備のデザインに関わる方がいらっしゃったら、一考していただけないでしょうかしら(ちらっ)。

 

この記事を書いた人

ゆうさく
ゆうさく
1985年生まれ。和歌山県出身。健常者。物忘れがやや激しめ。子ども時代の家族は、共働きの両親と共働きの祖父母、あまり動けない曾祖母と無駄に動き回る2人の弟達という、8人の小さなダイバーシティでした。趣味は工作。段ボールと木材は夢のカケラ。部屋作りも大好き。いつか家をDIYするんだ。あと、シンガーソングライターもやってます。ジムで本格的な筋トレも始めました。チャームポイントは大腿四頭筋と大胸筋。