それは
それは、貴方にとって必要な道具なの
「貴方が字を書くときに
ペンが必要なように、
線を引くときに
定規が必要なように、
貴方が歩く時には
杖と言う道具が必要なの。
身体の一部なの」
これは吾の妻が初めて
杖を使わなくてはならなくなった時、
杖を使うことに対する
抵抗と葛藤が有って
躊躇していた時に、
ある人から掛けられた
言葉である。
言われてみれば
「なるほど」と思う。
雨が降れば
傘という道具を使うが
誰も
「あの人雨が降っているのに
傘を使ったはるわ」
とか、
釘を打つのに金づちという道具を使うが
誰も
「あの人釘を打つのに
金づちを使ったはるわ」
とは言わない。
当然のことである。
ただその傘や金づちが
杖に代わっただけである。
その言葉を聞いてから
妻は杖を使い始めた。
最初は周りの人々から
「若いのに何故、可哀想に」
と言う目で見られたようだが
「必要な道具だから」
と自分に言い聞かせたようである。
そう言う吾も
転倒しないように
杖を使い始めた時、
この杖は自分が転倒するのを
防いでくれる道具
と思うようになっていた。
その頃の吾は少しの衝撃でも
脊髄損傷を起こしかねない
状態であったので
まさに自分の身体を
守る道具であった。
そして
妻の身体の一部であった杖も
歩行器になり
車椅子に代わって行った。
が、
それは自分を守る道具であり
自分らしく人生を楽しむ
手助けをしてくれる道具であり、
決して補助具では無い。
もっと道具を駆使して楽しもう。
この記事を書いた人
- 1960年の高度成長期真っただ中に生まれ、障害が有るから人の2倍3倍頑張りなさいと育てられ現在に至る。
アテトーゼ型脳性麻痺2級保持者。
趣味はギターにパソコン(何台作製し分解したかわからない)、とアマチュア無線。
アマチュア無線はインターネット、携帯電話が普及した中で、どれだけ小さな出力でどれだけ遠くに電波を飛ばせるかに情熱を燃やすちょっと変わった人。
真夏に極寒の南極昭和基地と交信できたのは印象的だった。
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