代橋亭ずずこの たのし、むずかし、はてなし日常
みんらぼ所長・代橋亭ずず子が「障害」「多様性」をめぐる思いを綴る日記。脳性まひあり、マーケッター、総勢4人の零細会社社長の視点も交え、みんらぼを世の中のムーブメントにしたいと目論むチャレンジングな取り組みの意図や迷い(愚痴?)もコクります。

《ずず日》ダイバーシティって知ってますか?

ブログを始めるならまずはペンネームだなと思い、考えに考えた末「代橋亭ずずこ」と決めた。
「ずずこ」は私が以前から使っている、朗読家としてのネーム「福豆々子(ふく・ずずこ)」から。代橋亭はこれからずっと考え続けていきたい「ダイバーシティ」のもじりだ。ちなみに豆々子の「豆」は自分の風体をどんぴしゃ表していると気に入っている文字なのだが、「代」「橋」にはまったく思い入れがなく、「亭」はいつか落語でもやるときにぴったりだなぐらいの、ゆきずりの間柄である。

ダイバーシティという言葉をご存じだろうか。
最近仕事でもずいぶん使うようになった。私の仕事はマーケティングプランナーだ。マーケッターなどともいう。人様の会社のマーケティング活動のお手伝いとして、消費者調査を企画したり、分析レポートを書いたり、そこから戦略提案をしたり、世の中のトレンドを読み物風の記事にしたりする。

いつごろだったか、新しい仕事の打合せで「ダイバーシティ」と誰かが発したのが、このことばとの出会いだった。「えっ、お台場にそんな商業施設あったっけ?」と思ったものの、ぐっとことばを飲み込む。トレンドスポットを押さえておくのはマーケッターのたしなみ、知った顔でとぼけるのは得意ワザ。話しの流れにお台場開発の話題は合わないとのとまどいを押さえ込んでやりすごし、オフィスに戻ってあわててググった。今でこそこのワードの検索結果はにぎやかだが、そのときは本当にできていた(!)お台場の施設名と、「ダイバーシティ=生物多様性」ぐらいの情報しか目に入ってこなかった。

「はい??生物多様性?なにそれ?」ともやもやすること数秒、「うん、つまりエコロジー系のことね」とわかったことにして、この言葉のことはそのままきれいさっぱり忘れていた(ちなみに、この「…系のこと」「…的なこと」とわかったことにするのもマーケッターの常套手段。そしてその日の打合せが何の仕事だったかをすっかり忘れているのは、最近そなわった忘却力による)。
そのダイバーシティと、昨年、やはり仕事の現場で運命の再会を果たす。そして今度はあれよあれよという間に、ペンネームに使うまでの深い関係になってしまった。

昨年夏、私は仕事上のひとつの決断をする。
私は有限会社ジャコという会社の社長である。社の業務の1つとしてマーケティングソリューションを提供しているわけだが、実は自分の会社のマーケティングなんてしたことがなかったことに、梅シロップの炭酸割を飲んでいたとき突然気がついた。なんとまあノンキな。ともあれ事実、初めて自分の会社の中長期プランを立てようと思い立ち、あれやこれやどうしたこうしたのいきさつののち、「ユニバーサル事業部を旗揚げする」と決めた。障害のある人や高齢者などをターゲットとする企業活動を支援する事業部である。

はしょったいきさつはあらためてお話しするとして、私はそのとき「これからは障害者としての自分として仕事をする」ことを決心し、これを自社の柱の一つにしようと考えたのだ。そして、新事業部立ちあげの意志を親しくしていただいている仕事先の部長殿に伝えると、部長殿からメールが届いた。
「弊社にはダイバーシティを研究しているセクションがあるので、そこをご紹介しましょうか」。

「ダイバーシティ・・・」。
もはやこれを「エコロジー的」で済ますわけにはいかない。私は生態系の保護に対する知見はない。
あらためて、ダイバーシティなることばを調べてみた。

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ダイバーシティ=diversityは、「多様性」「相違」を示す英語。
「離れる」「異なる」という意味の「di」と、「向く」という意味の「verse」から成り立つ。したがってダイバーシティの語源は「異なる方向を向いている」となる。「異なる見方をする」という解釈もある。
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「ええ~っ、なんでそうなるのっ!?」
そこまで調べて思わず声を上げてしまったのは、そのちょっと前に、ユニバーサル事業部を立ち上げるんだからとユニバーサル=universalについて調べていたからだ。

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ユニバーサル=universalは、「全体の」「共通」「普遍的」を示す英語。
「1つの」という意味の「uni」と、「向く」という意味の「verse」から成り立つ。
したがってユニバーサルの語源は「同じ方向を向く」となる。
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私はユニバーサル事業部を立ち上げると宣言したことで、真逆の意味のダイバーシティに出会ってしまったのだ。

はてさて、つまり、要するに。
2つのことばに挟まってしっかりじっくり考えたことを思いっきり中抜きして言うと、昨今の日本では、ユニバーサルは「いろんな人がいることを前提に、みんなが共通してよろこべる世の中を作ろう」的な文脈のなかで、ダイバーシティは「みんな違ってみんないい」系の意味合いで使われることが多い。
すご~く引いて見れば、ダイバーシティを前提にユニバーサルを目指すというように、同じライン上にある、同じような気分を指し示すことばとして使っている人も多いかもしれない。

しかし私は考えを進めるにつれてダイバーシティ氏にココロが奪われ、ユニバーサル君どころではなくなっていく。
共感したのではない。むしろ違和感に近い感情で、気になって仕方ない相手となる。
状態としてはツンデレである。

だって「みんなが違ってみんないい」って、ホントにホント?
じゃあ、違いって何?
違うことが何でいいの?

私が生きてきた日本の半世紀強の時間は、私にこれらの問いの答えを提供してはくれなかった。
これから変わっていく、すでに変わり始めているというのなら、そこを確かにつかみたい。「違い」を理解できないで、「みんながよろこべる」世の中などありえないだろう。

私がこのブログのペンネームにダイバシティを使うのは、これらの問いに対する腹オチできる答えを探し、発信していきたいという意思表明だ。

2018年7月4日、本サイト、みんらぼがオープンした。
みんらぼは「ひとりひとりの違い」にこだわり、違うからこその「へぇ」「ほお」を大切にするのが基本方針である。
同じ目的のことをするにも、人が違えば違うやり方がある。
まさにダイバーシティを切り取って集めたようなサイトとして、これからの世の中を考えるきっかけを提供していければと思う。

もしかしてひょっとして、「それはそうと、おまえの会社のユニバーサル事業部はどうなった?」と気にしてくださった方がいるかも、なのでお伝えをすると、「ユニバーサル事業部」の旗は下ろすことにする。だからといって「ダイバーシティ事業部」に乗り換えるということでもない。「うへ、聞いてない~~」という社員Aの声が聞こえるが、それはそうだろう。今、これを書きながら決めたのだから。へっへっへ。

もとい。そもそも弊社の該当セクションは私と社員Aの2人。「やるよ」「はい」ですべてが決定する。ユニバーサル事業部も「で、そういうことで!」「そうなんですね!」と決め、その意志を数名のお得意様にお話ししただけだ。看板を出したわけでも名刺に刷ったわけでもない。

それをわざわざ「やめる」というのは、ことさら「ユニバーサル」「ダイバーシティ」を掲げるまでもなく、それを弊社の全体とすると決意したからである。
ひとりひとりにこだわるマーケティングを通して、「障害のある人や高齢者などをターゲットとする企業活動」という枠組自体が意味のない世の中、さらに言えば、「ユニバーサル」「ダイバーシティ」のことばの意味を問うことも主張することも必要のない世の中を作ることに貢献するというのが、これからの弊社のミッションだ。

自分として、社として、目指すところは一致するが、そこにはたくさんの壁も感じている。笑って、悩んで、のたうちまわって、ぐずぐずだけどあきらめずに進む毎日。
私のそんなこれからに、ここでおつきあいいただけたらうれしいです。

この記事を書いた人

代橋亭ずずこ (Zuzuko Diversity)みんなの世の中研究所・所長
代橋亭ずずこ (Zuzuko Diversity)みんなの世の中研究所・所長
本名・小梨由美。脳性麻痺による上肢・下肢の機能障害あり。身体障害者手帳保有。生来歩行障害はあったが原因がわからず「足の悪い健常者」との自覚で育つ。2016年、思いがけなく脳性麻痺の診断を拝受。「なにそれ?」の疑問ととまどいの答えを探してネットサーフィンするなかで、たくさんの障害のある友人たちに出会う。それぞれの人が泣いたり笑ったり、のたうち回ったりしながらも、自分なりの知恵と工夫で暮らす姿に共感を深め、「みんなの世の中研究所」発足を決意する。趣味は朗読。最近はまっているのは「しいたけ占い」。東京・世田谷生まれ。(有)ジャコ代表取締役。マーケティング・プランナー。消費生活アドバイザー。

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