「同じ」と「違い」どちらも大切に|タップダンサーKIYOKA

こんにちは、ゆうさくです。
普段、毎日、日々の当たり前の暮らしの中で障害と寄り添って生きる人々の、まなざしや思いをご紹介する「みんらぼインタビュー」。
第一回目の記事に登場してくださるのは、姉妹タップデュオ『華~pusupa~(ぷしゅぱ)』として活躍し、「Dance World Cup 2014 World Finals in Portugal」でタップ部門日本人初の金メダルを獲得、「よ~いドン!」(関西テレビ)や、「ちちんぷいぷい」(毎日放送)など、国内メディアにも多数出演している一流のタップダンサー、KIYOKAさんです。

左手が中西浄華(KIYOKA)さん。右手は妹の優華さん。

KIYOKAさんとのご縁を繋いでくれたのは、みんらぼのメンバーである大畑楽歩さんでした。
運動系の障害であるアテトーゼ型の脳性まひをもつ楽歩さんが通い始めたダンススクールのタップダンスクラスで指導に当たっていたのが、KIYOKAさんだったのです。
楽歩さんから「今通っているダススクールと、そこの先生が素晴らしいの!」と連絡を受けた直後から、「運動系の障害を持つ楽歩さんが絶賛するダンス教室って一体どんなだ!?」と、僕らのアンテナは感度全開、興味津々。
大急ぎで段取りを付けてもらい、みんらぼのコンテンツ制作担当の仲間であるマエシマくんと共に、京都市営地下鉄の五条駅からほど近いダンススタジオ、「DANCE OFFICE ONE」に伺ったのでした。

当日はインタビューの前に1時間のグループレッスンを見学させていただいたのですが、僕とマエシマくんは2つのことに驚きました。
ひとつ目は、その日偶然体験レッスンで、耳の聞こえない方が参加していらっしゃったこと。
ふたつ目の驚きは、KIYOKAさんが当たり前のように、全てのメンバーと同じテンションでコミュニケーションを取りながら、フルスロットル×ノンストップのすさまじいエネルギーでこなしていたことでした。

通常の立った状態での指導はもとより、事務イスに座って踊る楽歩さんに対しては自分もイスに座って、体験レッスンに来ていた方とは手話(!)とボディランゲージを使ってしてコミュニケーションを取りつつ、テクニックや振り付けを指導していたのです。
スタジオに響き渡る音楽の音に負けない声を出しながら、おどる、はしる、おどる、はしる、またおどる・・・あまりのエネルギーに、僕とマエシマくんはすっかり圧倒されてしまったのでした。

子どもの頃から、身の回りに障害を持つ友だちが多い環境だったかもしれない

レッスンお疲れさまでした!

KIYOKA「お疲れさまでした!」

レッスンを見学させていただきましたが、ものすごいエネルギーでしたね。手話を使えるということは知らなかったので、その辺りも詳しく聞かせてください(`・ω・)

KIYOKA「よろしくおねがいします(^^)」

KIYOKA先生はもともと、学生のころに障害のある方たちと関わりがあったと伺いました

KIYOKA「有償ボランティアで、バイトではないんですけど、1コマいくらでお給料が出る形でやっていました。私が入った同志社大学は確か日本で一番の賞をもらったりして、障害学生支援制度がかなり進んでる学校だったんですよ。入った大学でかなり充実した制度に出会うことができたので、主に聴覚障害者さんのパソコンの同時文字起こしのパソコン通訳を中心に活動していました。」

障害を持っている人たちとの交流は、そこがスタートだったんですか?

KIYOKA「1番最初は、小学校に入った時に補聴器を付けた子がいて、たぶん難聴だったと思うんですけど。一般学級に通えるくらいなので、コミュニケーションは普通にとれたんですけど、サポートに付く、「聞こえの教室」の先生みたいな人が時々、「耳が聞こえないっていうことはこういうことなんだよ」っていう講義?授業をしてくれたりしていました。

で、ドラマで手話っていう言語を見て、そういう言語があるんだ、カッコイイなと思ったんですよ。英語をしゃべれる人を見てカッコイイと思うのと同じような感じで、手話いいなって思ったんですよね。

そのあと学校を転校したんですけど、そこにはまた、脳性まひなのかな?友だちで1人、電動車いすで生活してる女の子と、視野狭窄の男の子がいて。それで、視覚障害に関する講座をしてくれる先生がいたりとか、車いすのサポートも同じ班になった子がやるとか、大学に入る前から、そういう友だちがいるっていう環境では、割とあったかもしれない。

それと、父親が教育関係の仕事をしてるんですけど、割と自閉症の方とコミュニケーションが取れるタイプだったらしくて、そういう障害があるよっていうことと、普段こういう形で工夫をしてるよっていう話しを聞くことはあって。深く聞くことはなかったんですけど、まったく機会がない人に比べると、すごく出会う機会は沢山ある感じだったのかなと、今思います。」

引っ越した先でも縁があったっていうのは、めずらしいですよね

KIYOKA「そうなんですよ(笑)」

暮らしの中の風景の一部として、障害を持っている人が普通に居たっていうことが子供のころからずーっと続いていたと

KIYOKA「そうですね」

じゃあ、大学に入られてから、聴覚に障害のある方のボランティアに回っていくことも、先生の中では自然な流れだったんでしょうか?

KIYOKA「そうですね。大学に入ったので何かやりたいなと思ったときに、たまたまサークルの先輩が障害学生支援スタッフだったので、そういうものがあるっていうのを知らない子が学生でも多いんですけど、すぐに知る機会があって。じゃあぜひ!みたいな感じで、教えてもらってすぐやりました。」

そこに関心というか、自然とアンテナが向いていた、ということなんですね。では、ダンスに関することを聞かせていただきます。KIYOKA先生は本当に小さな頃からダンスをしていらっしゃったと聞いています。今日縁をつないでくれた楽歩さんは運動障害を持っていますが、今まで楽歩さん以外の運動系の障害を持っている方を生徒に持ったり、タップや他のダンスを通した交流のご経験はありましたか?

KIYOKA「ダンスを教えている上では、楽歩さんがはじめてですね。」

ピチピチなんですね(笑)

KIYOKA「ぴちぴち♡(笑)」

「ちゃんと教えていけるのかな」っていう不安は、最初はありました

楽歩さんは、先にジャズやロックの、KIYOKA先生の担当ではないダンスをしていたんですよね。で、運動障害のある人がスタジオに来始めたっていうのは、あんなの(楽歩さんがスタジオの休憩室に置きっぱなしにしている車いすバスケットボール用の車いす)がある訳だから、きっと耳にはさんでいて

KIYOKA「はい(笑)」

で、そのうち、あの人タップやりたいらしいよって話しが来る訳じゃないですか。

KIYOKA「きましたね(笑)」

そのとき、どう思いました?

KIYOKA「そうですね・・・もちろん、来てくれはるんやったらぜひ一緒にやりたいっていう気持ちはあるんですけど、一斉レッスン(複数の生徒さんを同じ時間に同時に見るグループレッスン)なので、今まで来てくれている生徒さんと、楽歩さんを同じ時間に持つということで、ちゃんと教えていけるのかなっていう。

前にも難聴の方とか来はったことはあったんですけど、条件の違う生徒さんを1時間の中で見ていけて、ちゃんとレッスンを提供できるのかなっていう不安はやっぱりありましたね。」

なるほどです。では、今。今年の3月くらいに「大丈夫かなあ」という不安があって、それでもあの人はどどどどどっと押し寄せてきているじゃないですか。それからもうかれこれ、2~3ヶ月、実際レッスンを進めてきた中で、具体的にこういう風にしてるよっていうポイントというか、考えというか、そういうものはありますか?

KIYOKA「そうですね・・・元々楽歩さんが来てくれているこのクラスが、レベルにものすごく差があるというか、10年くらい続けてる人もいれば、続けてるけど趣味の人もいるし、今日体験です、っていう人も、ダンスはしてたけどタップは今日初めて、とか、もうすごく状況が違う人がたまたま集まってるクラスだったんです。

で、いざ楽歩さんに入っていただいてやってみると、ステップってすごく足の先を細かく使うんですけど、私も楽歩さんの体の使い方で鳴らせるリズムを優先して使ってくださいねって言ったりとか楽歩さんも自分のできる形にうまく変換してくれたりとか、レッスンをする上で何か壁になるものがあるかなと心配していたことは、楽歩さんがすぐクリアしてくださいました。

後はまあ、元々レベルが違う人たちがすごくたくさんいたので、ひとつのクラスの中で課題を分けるとか、そういう環境はあったのでその中のひとつに、座ってやっていただくという形が入った感じです。実際やってみたら、ものすごく自然に運営していけるかも!っていうのがあって。私も普段はもちろん立って踊ってることの方が多いんですけど、座ってやるっていう形を私も一緒にやったりするんで、その中で「こういう踊り方もできるな」っていう新しい発見をいただいたりして、すごく楽しく進んでます。最初は不安が大きかったんですけど、本当に同じようにレッスンをすることの中に入ることなんだというのは実際に入っていただいて、よく分かりました。」

さっき実際に1時間のレッスンを後ろから舐めるように見ていた訳ですが(笑)、KIYOKA先生は、どのグループに入っていっても楽しそうなんですよね

KIYOKA「(笑)」

すごいなと思ったのが、こちらで踊っている人たちがいて、こちらで座って踊ってる楽歩さんがいて、最後に課題の曲を皆で流れでやるっていう。それまではパートやグループごとの練習だったものをひとつの流れの中で見た時に、立っている人たちと座っている2人っていうのがすごくきれいにマッチしていて、奥行きを感じたんです。懐の深さというか、ただただ立っている位置の前後とか、そういうものではなくて。あと、すごく先生が色々考えて作ってらっしゃるなぁと思いました


KIYOKA「私がですか?」

こう重なると、こう見える、みたいなことを。

KIYOKA「あーーー、それはありますね」

ちなみに、楽歩さんから「ここもっとこうしたい!」とか、注文が出ません?

楽歩「おとなしいから、そんなこと言ってない(笑)」

ぜったい信じない(笑)

KIYOKA「このクラスでは、ないですよね?」
楽歩「今はまだ言ってない(笑)」
KIYOKA・ゆうさく「「今はまだ(笑)」」

もう何ヶ月かしたら出てくるかもしれない

KIYOKA「今回楽歩さんからガッと来たメッセージは、「発表会に出ます!」っていうことだったんですよ(笑)それは剛速球で来て(笑)

で、生徒さんのための発表会なので、私もいっこ成長させてもらえる機会かなと思ったんです。それで、出る方みんな同じフリの中に組み込むっていうことをずっと意識していて。楽歩さんがガッと来てくれなかったら、ずっとバラバラだったかもしれないです。

振り付けも、私も座って踊ろうかなと思っているので、出てくれているみんながひとつになる、いっこの作品なので、作品のひとつ感を出していきたいなと。それが形になっていったら嬉しいんですけど。」

例えば、座って踊るっていう制約の中に沢山の発見があったっていうことでしたけど、それが立って踊る時の振り付けに活かされいるようなことはありますか?

KIYOKA「私、今妹とデュオでタップダンスをしていて、椅子を使った作品もあったんですけど、私にとっては立つことと座ることはセレクトだったんです。その中で、椅子で踊ることって、結構色んなことができるなと思ったので、いつもは立つことが多いけれど、そこであえて座るっていうセレクトをしていくことはこれからあるかもしれないです。そういう、何かこれから使っていけるかもと思うことは、楽歩さんと一緒に踊っていて、感じることはありましたね。」

変な線の引かれ方で廃除されちゃう感じとかは、経験したことがあります
そういうのは嫌なのかもしれないです

素敵!例えば今のお話だと、楽歩さんと一緒に踊ることの中でご自身に起こったトピックのひとつが、今聞かせていただいた「椅子で踊る」っていうことなのかなと思っているんですが、身体の動かし方以外に、気持ちの向け方であったり、考え方などの中で、「ちょっと変わってきてるかも」と感じていることは何かありますか?

KIYOKA「やっぱり最初は、自分にできるのかなっていう不安もありましたし、来ていただいた時に、どのこくらい一緒に踊れるんだろうっていうのがやっぱり、どっかで出来ないんじゃないかなっていう不安はあって。そこは、すぐ「できない」としてしまうのは自分でしたくなかったんですけど、やっぱりどっかで、「できるのかな」という気持ちがありました。

今は、「できるのかな」という気持ちは完全になくなりました。毎週来てくださってますし、どんどん上手くなってくれて、できることも増えてくれてはるし。そこで止まってたら、私の指導が、ちゃんとステップアップするための何かを提供できてないのかなと思っていたかもしれないんですけど。普通に一人の生徒さんとして来てくれてはる、という光景が、この木曜日のクラスに入ってきているので、「できないかもしれない」という気持ちは今はなくなりました。それはすごく大きい変化かもしれないですね。」

後ろから見ていると、生徒さんのグループごとにお伝えしていることが違うなというのは見ていて分かるんですけど、生徒さん達と向き合うテンションは、誰と向き合っていても同じだなあと感じたんですが、それは意識してされていることですか?それとも、色んなグループの間をものすごい勢いで走り回っていると、あのテンションでしかできないとか(笑)

KIYOKA「そういうことは半分くらいあるかもしれない(笑)まあでも、違いがあるっていうことはあるんですけど、必要のない「違い」は作りたくないというか。

私実は、結構重度なアトピー性皮膚炎を持っていて、こないだ2年くらいは結構重度で悩んでいたんです。だから、違いはあるけど、違いがないところは違いがないところとして見てほしいっていう気持ちは、どっかにあるのかもしれない。

小学校一年生の時は、アトピーがひどくて学校に行けなくて、登校拒否で休みたいと思っていると思われちゃったこととかもあって。気持ちとしては行きたいし、みんなと一緒にしたいっていう気持ちは一緒なんだけど、日に当たったりとか、プールに入れないとか、物理的にできないことはあるっていうことは理解して、違いの部分と、同じ部分は知ってもらいたいっていうのは昔からあったかもしれないです。

アトピーって病気ではあって、障害ではないんだけど、完全に健常かというとそうではないというきわどいところで、アトピー患者の中でそういう話題が出ることはあって。違いがあるっていうことに関しては当事者だったりするところがあるので、やっぱり変な線の引かれ方で、「線があるからナシ」とか、こういう廃除されちゃう感じとかは、自分が経験したことがあります。そういうのは何か、嫌なのかもしれないです。違いがあることはもちろんそうなんだけど、ここまでは一緒にできるっていうのは、なるべくしたいのかもしれない。

最初に楽歩さんがダンスレッスンに来た時に会ってた吉田千佳子先生が私がアトピーでボロボロだった時に受け入れてくれた先生で、
そういう先生に私は救われたんです。そのダンスがモチベーションになって、発表会にみんなで出たいっていうのでアトピーを治せたんですよ。そういう意味で、ダンスに助けてもらったり、先生に助けてもらったっていう経験は大きいかなと思います。メイクとかも、使えないものもあるんですけど、一緒の衣装を着て、一緒の作品に出させてもらったので、そういうのはやっぱり、自分のベースになってるかなと思います。」

じゃあ、周りに障害のある方がただ居た、ということではなくて、ご自身にも人とここがちょっと違う、というご経験もあったということなんですね。

KIYOKA「そうですね」

お時間ですね。色々とお話しを聞かせていただいてありがとうございました!

KIYOKA「ありがとうございました♪」

あと、最後にすごくどうでもいいことなんですけど

KIYOKA「はい?」

靴下めちゃめちゃかわいいですね(笑)

KIYOKA「そうなんですよ!(笑)クマさん、しっぽがあるんですよ!(笑)」


小さな頃から障害が身近なものだったKIYOKAさん。
お話しを聞いているうちに、ただ周りがそうだったというだけではなく、ご自身にも人との「違い」を感じる部分があったことが、障害であったり、人と人との違いというものに対して、一歩踏み込む価値観や勇気につながっているのかもしれないと感じました。
平成2年生まれという若さでいながら、多くの生徒さんがレッスンを受けに来続けている背景には、そういった懐の深さがあるのかもしれませんね。

KIYOKA先生のプロフィールや、レッスンを持っているダンススタジオの情報はこちらです。
ダンスの動画もたくさんアップされているので、ぜひご覧になってみてください。
超カッコイイですから。

あ、それから、こちらのダンススタジオは車いすで踊りたい、という方も受け入れてくださるとのことです。
ふつうダンススタジオは、床の痛みを気にしてタイヤの着いている車いすのレッスンを受け入れてくれるところがとっても少ないのだと聞いたので、とっても貴重ですね。
ご興味のある方は、一度見学に行かれてみてはいかがでしょう。


中西浄華(KIYOKA)

Webサイト:puspa-tap.com
平成2年生まれ 京都在住。
吉田千佳子氏に師事。DANCE OFFICE ONEにてあらゆるダンスを学ぶ。姉妹タップデュオ華~puspa~として国内外の様々な式典、公演に出演している。

Dance World Cup 2014 Open Duet/Trio Tap部門 金メダル受賞。イタリア国際バレエ大会 ソロコンテンポラリー部門優勝。ダボス会議選出 Global —er。

 
 

DANCE OFFICE ONE(DO-ONE) ダンスオフィスワン

〒600-8427 京都市下京区玉津島町316-2 川南ビルB1F
TEL 075-352-9780
Webサイト:http://www.do-one.net/index

この記事を書いた人

ゆうさく
ゆうさく
1985年生まれ。和歌山県出身。健常者。物忘れがやや激しめ。子ども時代の家族は、共働きの両親と共働きの祖父母、あまり動けない曾祖母と無駄に動き回る2人の弟達という、8人の小さなダイバーシティでした。趣味は工作。段ボールと木材は夢のカケラ。部屋作りも大好き。いつか家をDIYするんだ。あと、シンガーソングライターもやってます。ジムで本格的な筋トレも始めました。チャームポイントは大腿四頭筋と大胸筋。