【歩きづらい】車いすライフを見据えた住宅リフォーム①玄関~リビングダイニング

こんにちは、ゆうさくです。
ご夫婦で脳性まひを持つヒロさんあこさん夫妻。
数年前奥さまのあこさんが脊椎狭窄症による手術を受けた時、今後は車いすの生活になるかもしれないと考え、住んでいるマンションを自分が快適に過ごせるようにリフォームしました。
家の中のどんなところに不便があって、だからどういう視点でリフォームをしたのか、お部屋ごとのポイントを聞いてきました。

リフォーム中で、壁も床も何もかも取り払った状態のヒロさん、アコさんの家の画像

リフォーム中で何もかも取っ払ってしまった自宅の写真。
こんなに広かったの!とびっくりするあこさん。

家の中から段差をとっぱらってしまおう

そもそもリフォーム前の家で二人が苦労していたのは、やっぱり段差。
あこさんは痛みがあって足が上げられなかったので、大きな段差を超えることが大変になっていました。
一方で、ヒロさんは大きい段差は意識して超えられるけれど、意識から外れやすい逆に小さな段差につまづくようになってきていたのだそうです。

また、冒頭でお伝えしたとおり、今後車いすに乗った状態で生活をすることを考えたら、家の中の廊下はちょっと狭すぎる、ということになったそうです。
それで上の写真のように、建具を全て取っ払って家を新しく作り直す、大がかりなリフォームをすることになりました。

玄関の謎の段差を撤去

リフォーム前、二人の家の玄関には、異常に高い謎の段差がありました。

リフォーム前の家の玄関。玄関を入ったところに、そこだけ盛り上がった不自然な段差がある

リビングと玄関の土間の間に、不自然に高くなっているところがあるのが分かりますね。
どうやら右手側にある脱衣所やお風呂からの配管が這っていたようです。
この段差、なんと14センチ近くあったそうで、暮らしの中で絶対に通らないわけにはいかない場所が盛り上がってるもんだから、あこさんは非常に苦労していたんだとか。

廊下の幅も普通に歩いて暮らす分には問題ありませんが、車いすで出入りすることを考えると、ちょっと狭いですね。

玄関の段差が生んでいたもうひとつの問題が、こちら。

夫婦の寝室から段差を見た画像。部屋に入るためには、段差を一段降りなければならない

寝室からの写真ですが、「体重をかけている扉が開いたら床が1段下がっている」状況です。
特に手元で体重を支えることが多い二人にとって、これはとっても身近でとってもキケンな状況でした。

で、リフォーム後の画像がこちら。

リフォーム後の段差。玄関から寝室、リビングまで、全てがフラットで繋がっている。廊下の幅も広がった

玄関からリビングまでフルフラットにし、廊下の幅を広げました。
これで、将来的に車いすに乗ったままリビングに入ってくることになっても大丈夫。
ただ、そうすると車いすの導線を確保するためにモノが置けないので、手がかりになるように手すりを設置しました。
壁の中にはしっかりした補強が入っていて、体重をかけても壊れないようになっています。

寝室へのドアも吊り下げ型のスライドドアに変更したので、ここも床の凹凸とオサラバです。

玄関の脇のスペースに収まっている歩行器と車いすの画像

車いすや歩行器を待機させておけるように、玄関の土間は広く設計されています。
扉が内開きなのがやや不便ですが、ここはマンションの共用部ということで、外開きにすることはできなかったのだとか。

どこまでいってもフルフラットに。素材にもこだわり

もともと3LDKだった家の中は、部屋ごとに仕切りがありました。
これが、ヒロさんがよく足をひっかけていた段差ですね。

リフォーム前のダイニングと、各部屋との仕切りの様子。2センチほどの小さな段差がある

そんなわけで、廊下~寝室だけでなく、その他の全ての空間をフルフラットに再設計。
間取りは2LDKに変えて、リビングとダイニングを一体型に変更しました。

現在のダイニングの様子。洋室もリビングも全てフラットで繋がっている

右のスライド扉を開けるとお子さん達の部屋。
そちらでの収納スペースを確保するために、リビング側に壁が少しせり出してくる形になりました。

現在のリビングの画像。フルフラットの床の上に、背の低い家具が並んでいる

ダイニングからリビングを見渡した様子。
テーブルの上のゴチャゴチャしてる色々は僕の荷物です。オハヅカシイ

ただフルフラットにしただけではなくて、床の素材も、「すべりにくく」「やわらかく」「振動を伝えにくい」ものをチョイス。
転倒を予防するのはもちろんのこと、お皿を落としても割れにくいことや、いつか車いすで過ごすようになっても下の階にタイヤの振動が伝わりにくいようにということも考えてのことです。

そうそう、ダイニングからリビングに向けて並んでいる家具も、あこさんが扱いやすいように、背の低いものを選んでいます。
もともと、阪神大震災の時に家具がダメージを受けていたらしくて、リフォームの時に思い切って交換したんだそうです。

リフォームまでしなくても、きっと参考になるあれこれ

自分たちの将来を見据えて住まいに投資する姿勢から、二人が普段の暮らしをとっても大切に思っているまなざしが伝わってきました。
「自分たちの体のことばかりで、子どものことは全然考えてないけど(笑)」
なんていい顔で笑っていたことはヒミツにしておきましょう。

さて、住宅のリフォームともなると、軽い気持ちでできることではないですよね。
僕の住まいも賃貸なので、何か気になるところがあっても、切った貼ったをするわけにはいきません。

とはいえ、例えばヒロさんは廊下を広くするために手すりをつけたわけですが、手すりがどうしてもつけられない場合、逆に「しっかりした家具を置いて手がかりにする」ことならできるかもしれません。
「キッチン周りにはお皿を落としても割れにくいように柔らかいシートを敷く」というのもカンタンそう。
二人が気にかけたポイントには、リフォーム未満の“プチ改造”に役立つヒントもありそうな気がします。

今回は玄関からリビングダイニングにかけての、リフォームのポイントのご紹介でした。
脱衣所やお風呂などの水回りに関するお話しは、また後日ご紹介しますね。
 
 

 

この記事を書いた人

ゆうさく
ゆうさく
1985年生まれ。和歌山県出身。健常者。物忘れがやや激しめ。子ども時代の家族は、共働きの両親と共働きの祖父母、あまり動けない曾祖母と無駄に動き回る2人の弟達という、8人の小さなダイバーシティでした。趣味は工作。段ボールと木材は夢のカケラ。部屋作りも大好き。いつか家をDIYするんだ。あと、シンガーソングライターもやってます。ジムで本格的な筋トレも始めました。チャームポイントは大腿四頭筋と大胸筋。